心叫



Side I


「…こいずみ…。」

ようやく追いついた彼の瞳から涙があふれていた。

はらはら、と。
それは綺麗な涙。

「…なぜ泣いてるんです?」
聞きたいことはたくさんあったけれど、まずそのことだ。

どうして泣いてるんですか?
僕が何かしましたか?
僕があなたを悲しませているんですか?


なぜ 今逃げたんですか?

次々と疑問があふれてくる。


でも、その前に。
彼の涙を止めたい。


せめてその涙をぬぐいたい。
そう思って僕は彼に手を伸ばした。
すると。


「…!」

びくり、と彼は身体を震わせる。

それを見て、僕はそれ以上手を伸ばせなくなった。

どうして…。


「…僕が…。」


嫌いになったのですか、と聞けなくなった。
答えを聞くのが怖くて…。


「…古泉…。」
「はっ…はい?」


ショックを受けていると、彼がまだ涙をこぼしながら僕の名を呼んだ。
そして彼は小さい声でぽつり、と。



「…俺の事…嫌いになったか…?」

「え…?」


僕は今度は愕然とした。
何を言ってるんだ?彼は。
僕が彼を嫌うなんて…そんなこと…。

「そんな…そんなことあるはずがない…!
 何を言ってるんです、あなたは?!」

声を荒げて聞くと、彼はまたびくりと震える。
でも今度はそれを気遣う余裕などまったくなかった。
彼が僕の、この一番大事にしている気持ちを疑ったことに逆上していた。

僕は彼の肩をつかみ、また叫んだ。

「僕が…僕があなたに好きといってもらえてどれほど嬉しかったか・・。
 それまでどんな想いであなたを見ていたか…分からないんですか?!」
「…っ…ごめん…っ…わかってる…それは分かってるんだ…。」
「分かってなんかいません!!
 ならなぜ震えてるんです?!僕を信じてくれていな…。
「分かってんだよ!!」

「キョン君?」


「分かってるんだ…今だってお前の感情が俺を好きでいてくれるって…
 心配してくれてるって…っ流れ込んでくる…包んでくるみたいに…。
 けど…。」


え?


感情が?


流れ込んで…って…。


キョン君が嗚咽を漏らしながら言う言葉を、すぐには理解できなかった。


「だけど…これをお前が知ったら…嫌いになる…。
 気持ち悪いって…思うにきまってる…。」


「…キョン君…。」


涙を流し続けるキョン君の肩をつかんだまま、僕は彼の言葉をやっと咀嚼し始めていた。


感情が流れ込んでくる、と彼は言った。
僕の感情がと。

知ったら嫌われる、と彼は言った。
気持ち悪いと思われる、と。


つまり…それは…。




まさか、と思った。
だが僕が範囲限定の能力者であり、宇宙人や未来人や、ましてや神の能力をもつ少女がそばにいるような状態で。

ありえなくはないと思った。


だから僕は、聞いてみることにする。
もし、それが彼の苦しみの原因なら。


「キョン君…貴方は…もしかして…。

 テレパス、なんですか?」


「…。」

彼の肩はまた一度ぴくりと震え。


少し間をおいて、彼は小さくうなずいた。



まだ涙をこぼしたままで。




                                     To be Continued…



このシリーズ、ここから新作になります。
そしてすみません、続いてしまいました;;;

もうあと一往復くらいで終わりです。
ありがちですが書いててとっても楽しいですvv



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